Memories Off2nd~First episode(第5話 巴の章)

第5話 巴の章

みなもは次の授業が音楽ということで、校内の廊下を歩いて音楽室へ向かっていた。
ちょうど2階から3階へ続く階段に差し掛かったとき、突然、バサバサッという派手な音がしたのと同時に無数のプリントがみなもの足元に散らばった。
「あちゃー、落としちゃったよー」
慌しい足音を立てながら、ひとりの女生徒が階段を降りて来た。
外見や仕草から見て、とても活発的な女生徒だということがひと目で分かった。
「うわー、派手に散らかっちゃったな。悪いけど、拾うの手伝ってくれる?」
女生徒は、目の前にいたみなもに助けを求めた。
「あ、は、はい」
女生徒に言われて、みなもは急いでプリントを拾い始める。
すべてのプリントを拾い終わると、それを女生徒に渡した。
「ありがとう、おかげで助かったよ。私は飛世巴っていうの。あなたは?」
「私は伊吹みなもといいます。あの、飛世さんって、確か白河ほたるさんの知り合いなんですよね?」
「え、あなた、ほわちゃんのこと知っているの?」
「はい」
みなもは、巴にほたると出会ったときのことを話した。
「なるほど、それで私のことを知っていたんだ。ほわちゃんと私は中学時代からの友達なんだよ。それにしても、ほわちゃんは相変わらず抜けているとこがあるなあ」
巴は、かすかな笑みを浮かべた。
「だけど、こうしてみると世の中ってほんとに狭いね。まさかこんな形でほわちゃんのことを知っているひとと出会えるんだから」
「本当にそうですね」
みなももそのことには関しては同感だった。
偶然の出会いから、こうして次々と知り合いが増えていった。
病院生活が長かったせいで、友達が少なかったみなもにとっては、嬉しい出来事だった。
「だけど、ほわちゃんは普段は天然ボケ気味だけど、ああみえてもピアノがとても上手いんだよ。今、コンクールに向けて、すごく頑張っているみたいだし、私も、負けていられないわね」
「飛世さんもピアノをやっているんですか?」
「ううん、私がやっているのは演劇のほうだよ。私、こう見えても女優を目指しているんだ」
誇らしげに言う。
「うわあ、すごいです!私、飛世さんの舞台が見たいです!」
みなもが目を輝かせる。
「ありがと。そう言ってくれると、すごく嬉しいよ。もし、よかったら今度、見学に来なよ。私が所属している劇団の場所、教えてあげるからさ」
「え、いいんですか!それじゃ、ぜひ教えてください!」
「うん、場所は・・・」
巴は身振り手振りを交えて、劇団の場所を丁寧に教えた。
ちょうど、そのとき、授業開始のチャイムが鳴った。
「あ、いけない。早く行かないと遅れちゃう!」
「やばい、先生が来る前にプリントを配っておくように言われていたんだ」
慌てふためくみなもと巴。
「それじゃ、絶対に見学に来てよね。約束だよ、みなっち」
そう言って駆け出す。
「分かりました・・・って、なんですか、そのみなっちって?」
みなもは、走り去っていく巴に尋ねたが、答えは返ってこなかった。
「多分、私のことだよね・・・あ、そんなこと考えている場合じゃなかった!」
みなもも、すぐ階段を駆け上がった。