Memories Off2nd~First episode~(第3話 つばめの章)

第3話 つばめの章

桜峰の商店街を通り抜けると、みなもはとりあえず海が見える場所を目指して歩いた。
その途中、小さな公園を見つけて、みなもは中に入った。
中は小さいながらも、木々の緑が豊富にあって、とても気持ちのいい公園だった。
みなもは、この場所がすごく気に入ったので、ここでスケッチをしていこうと決めた。
どの風景を描こうかと歩いているとき、ひとりの女性と出会った。
年は20代前半くらいだろうか。
女性は無表情で虚空に視線をさまよわせていた。
その姿には、気力というものがまったく感じられなかった。
ただ、単に生きている・・・そんなふうにもとれるような雰囲気さえ、感じられた。
───不思議なひと・・・
みなもの視線がその女性に釘つけとなった。
「・・・何か用・・・?」
女性は、みなもの存在に気付いたらしく、顔だけを後ろに向けた。
「あ・・・そ、その、用という用はないんですけど・・・」
みなもは、いきなり声を掛けられ、すっかり動揺してしまった。
「その・・・何を見てるのかなって思って・・・」
「・・・風を見ていたの・・・」
「え・・・風・・・ですか・・・?」
意外な答えにみなもは、はとが豆鉄砲を食らったような顔をした。
女性はその質問に、答えることなく、ふたたび顔を正面に向けた。
「どうして、ひとはこの風のように生きていけないのかしら・・・風は、あてもなく、ただ流れていくだけ・・・ひとも同じように何も考えず、ただ、運命という風に身を委ねていれば、苦しみや悲しみを感じなくてすむのに・・・」
ぽつりとつぶやく。
「・・・それは違うと思います!」
みなもが強い口調で訴えた。
「苦しみや悲しみから逃げるだけじゃ、駄目です!ときには苦しみや悲しみ
に、真っ向から向き合うことが大事だと私は思います!」
「そう・・・」
女性の瞳とみなもの瞳がぶつかり合う。
みなもの瞳に映るのは、暗く深い輝き。
女性の瞳に映るのは、溢れんばかりにまぶしい輝き。
互いの輝きが交錯して数秒後───
「・・・私は南つばめ・・・よかったら、あなたの名前を教えて・・・」
「あ、私は伊吹みなもといいますが・・・」
予想外の発言に、戸惑い気味に答える。
「あなたのこと、覚えておくわ・・・」
つばめと名乗った女性は、そう言い残すと、みなもの脇を通り抜け、その場から去って行った。
「・・・あのひとの瞳・・・どこかで見たような気がする・・・」
みなもは、スケッチブックを抱えたまま、じっとつばめの後ろ姿を見つめた。

File written by Adobe Photoshop? 5.1