Memories Off2nd~First episode~(第2話 鷹乃の章)

第2話 鷹乃の章

みなもは、駅から歩いて5分ぐらいのところに位置する商店街にやってきた。
桜峰の商店街は、こぢんまりとしていたが、それでもそこそこの賑わいを見せていた。
「あ、あんなところに駄菓子屋さんがある」
みなもがその店に気を取られた瞬間、誰かと正面衝突してしまった。
そのはずみで、相手が持っていた本が派手な音を立てて、辺りに散乱してしまった。そして、それと同時にみなもがバランスを崩して転びそうになった。
「きゃあ!」
思わず悲鳴を上げるみなも。しかし、寸でのところでぶつかったひとに支えられて、難を逃れることが出来た。
「あ・・・」
みなもは相手の顔を見るなり、思わず言葉を失った。
彼女を支えてくれたのは、背が高く、ほっそりとした少女だった。
少女は同性のみなもが見惚れるくらい、凛々しくて綺麗な顔をしていた。
どこか冷たい印象もあったが、かえってそれが魅力的に感じられた。
「大丈夫?」
少女の言葉で、ようやくみなもは我に返った。
「あ、ご、ごめんなさい!私ったら、ぼおーっと歩いてしまって・・・あ、本を拾わなくっちゃ!」
「いいわ、私が拾うから」
慌てふためくみなもを制して、少女がすばやく自分の本を拾い集めた。
「本当にすみませんでした。あの、申し遅れましたが、私は伊吹みなもといいます」
と言って、みなもは頭を下げた。
「私は・・・寿々奈鷹乃っていうの」
「寿々奈鷹乃さん・・・いい名前ですね」
みなもの言葉に鷹乃は、そっぽを向いた。
「あ、あの、私、何か気に入らないことを言ってしまいましたか?」
鷹乃の態度にみなもが表情を曇らせる。
「いえ、そうじゃないの。気にしないで」
「そ、そうですか・・・」
鷹乃の言動に首をかしげる。
そのとき、鷹乃の首に掛かっているペンダントがみなもの目に止まった。
「あ、そのペンダントの石って翡翠ですよね。すごく綺麗ですね」
「そ、そう・・・ありがとう・・・」
鷹乃は嬉しそうにはにかんだ。
先ほどまでとは、別人のようなまなざしになっていくのが、手に取るように分かった。
「翡翠って5月の誕生石で、長寿と健康を司っていて、中国では古来より仁・義・礼・智・勇の五徳を備えた石として尊ばれているんですよね」
「よく知ってるわね。あなた、鉱石に詳しいの?」
「いえ、私が知っているのはそれだけです。たまたま読んだ宝石関係の本に、そんなことが書かれていたのを偶然、思い出しただけですから」
「そう・・・でも、それだけ知っているだけでもすごいわ」
鷹乃は感心したようにうなずく。
「私、そろそろ行くわね」
「そうですか。さっきは本当にすみませんでした」
再度、頭を下げる。
「もういいわ。それじゃ、さよなら」
鷹乃は、みなもの横を通り抜け、商店街のわき道に入っていった。
「鷹乃さんか・・・」
みなもは、鷹乃の姿が消えた路地を一瞥したあと、ふたたび歩き出した。