Memories Off2nd~First episode~(第6話 希の章)

第6話 希の章

午前中の授業が終わったことを告げるチャイムが鳴り、教室にいた生徒たちの動きが慌しくなった。
学食へ行く者、購買部へ行く者、友達と机をくっつけて、持参の弁当を用意する者・・・昼休みという時間ならではの風景がそこにあった。
みなもは自分の机の上に、可愛らしい弁当箱を広げ、中身を箸で突付いていた。
「みなもちゃん」
そんなとき、ショートカットの女の子がこちらにやって来た。
「あ、希ちゃん」
みなもの箸を持つ手が止まった。
「あの、一緒にごはん食べてもいい?」
希と呼ばれた少女は、おどおどとしながら尋ねた。
「私に遠慮なんかしなくてもいいわよ、希ちゃん。一緒に食べよ」
「ありがとう」
希は近くにあった椅子を借りると、みなもの反対側に腰掛け、弁当箱を置いた。
彼女の弁当は、みなもの弁当よりもさらに小さかった。
「いただきます・・・」
希は弁当を一口食べると、ため息をついた。
「どうしたの?」
みなもが心配そうに尋ねた。
こういうため息をつくとき、何か悩みがあるときだということを、みなもは知っていた。
同じ美術部に所属していて、1番、希と会話することが多いからである。
「あのね・・・また喫茶店のバイトでドジをやって、お客さんの服に料理をこぼしてしまったの・・・」
希はうつむき加減に答えた。
「あーあ、私、みなもちゃんがうらやましいな。みなもちゃんは可愛いし、絵も上手いし、しっかりしているし・・・それに引き換え、私は可愛くないし、絵も下手だし、いつもドジばっかりやっていて、ほんと駄目だよね」
「そ、そんなことないよ。希ちゃんだって、可愛いし、絵だって上手よ」
みなもは大きく首を横に振った。
「ううん、そんなことない。私は何やっても駄目な女の子なんだよ・・・」
自嘲気味につぶやく。
みなもは少し考え込んだあと、希に微笑みかけた。
「ねえ、希ちゃん。今度、私と似顔絵の描きっこしない?」
「似顔絵の描きっこ?」
「そう、希ちゃんが私の似顔絵を描いて、私が希ちゃんの似顔絵を描くの。ね、いいでしょ?」
「え、でも、私がみなもちゃんの顔を描くと、絶対、変になってしまうと思うよ・・・」
希は困ったような表情を浮かべた。
「そんなこと気にしないで。私、一回でもいいから、希ちゃんに似顔絵描いてもらいたかったの」
「え、そ、そうなの?」
希が戸惑いながらも、表情を軟化させた。
「そうよ。だから、今日の放課後、美術室で描きっこしようよ、ね」
「う、うん。みなもちゃんがそこまで言うなら、いいよ」
「よかった。それじゃ、放課後、忘れないでね」
みなもの言葉に、ようやく希の顔に本来の明るさが戻った。